Keys to the City #02 – Andrew Curry (Cafe manager)
東京を拠点に活動するエディター、Ben Davisによる暮らし方と生活空間を紹介する連載コラム。
Andrew Curryが初めてサイフォンコーヒーを口にしたのは10年前の京都だった。
その出逢いがその後の彼の人生を決めることになった。コーヒーに魅了された彼は、その後、サンフランシスコにあるブルーボトルコーヒーに加わって、2014年の終わりに、日本での1号店を立ち上げるため東京へやってきた。
僕は暖かい10月の朝に、彼の代々木上原の小さな部屋を訪れた。それは不要なものがない、とてもこざっぱりとした部屋で、彼がシンプルな暮らし方を信条としていることが見てとれた。きっと彼がサンフランシスコから、シアトル、東京とコーヒーとともに転々としてきたことと無関係ではないだろう。そんな彼の暮らし方について話を聞いた。
– 僕は高いところに慣れていないから、5階だとなんだか世界が違って見えるね。この部屋の第一印象はどんな感じだった?
この部屋を初めて見たのは冬の日の午前中だったと思う。窓から部屋に日差しが差し込んでいてとても暖かそうだった。それまでは古い日本家屋に住んでいて、それも最高だったけど、冬のすきま風には辟易としていたから、戸の立て付けのしっかりとしたこの家がとても素晴らしく感じたよね。
– 狭いけどそれは気にならない?
確かに狭い。だけど僕はあまりモノを持たないからこれくらいで良いんじゃないかな。何度も引っ越してきたからさ、モノが少ないんだ。今だって、 「何か捨てなきゃ」って掃除するたびに思っているよ。何かを買おうと思う時は、本当に好きになれるのか、大事にできるのか考える。でも、生活に必要なものしかいらないってわけじゃないよ。例えばカメラとかね。カメラが大好きなんだ。
– カメラは手放せないんだね。
そう。いつも持ち歩いているよ。知らない場所へ行って、狭い道をゆっくり歩き、たくさん写真を撮る。そうすることで、その街の魅力をより深く知ることができて、自分と街がつながっていくように思うんだ。
東京は本当に大きい街だけど、でもそれは小さな小さな場所が集まってできている。軒先の鉢植えや花壇の手入れしている風景が大好きで、よく止まって写真を撮る。他の人が見たらなにが面白いのかって感じだろうね(笑)。でも見過ごしてしまうような何気ない街の風景が集まって街全体の魅力をつくっていると思うんだ。誰も意識しないような風景が集まってね。
– 暗くなってからの撮影が多いみたいだけど?
そう。このすごく大きくて賑やかな街にも、皆が家に帰った後、ふと孤独な瞬間が訪れる。そんな瞬間を見つけ出して写真に撮るのが好きなんだ。多くの人が忙しなく動いている日常の中に生まれたわずかな静寂。まるで街が瞑想しているようだよ。
– この家での暮らしが、君にとっては瞑想のようなものなのかな?
そうかもしれない。忙しいカフェの現場で働くことも僕の仕事のひとつなんだけれども、やっぱり疲れるよね。それをリセットしてエネルギーをチャージするためにも、素の自分に戻る時間が僕には必要。それがこの家にいる時間ってことかな。
最初はもう少し広い方がいいって思っていたけど、慣れてくるね。朝にヨガをするんだけど、ベッドの横にヨガマットがぴったり敷ける。ソファでも置いたらもっとリラックスできるのかもしれないけど、もう諦めた。いつかは広い部屋に住んだらもっと色々なものを買ってみようかな。(笑)
Keys to the City #02
Andrew Curry
New store opening specialist/photographer, Blue Bottle Coffee
Lives in Yoyogi-Uehara. Works in Nakameguro. Plays in Nakameguro.
https://www.instagram.com/a_curry//
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Photo & Article : Ben Davis