ついに始めてしまった、自分の中で禁じ手にしていたエスプレッソ。

喫茶店をやっていた家に生まれ、慣れしたんできたハンドドリップで淹れるコーヒーに、さらなる新しい世界を加えようとエスプレッソマシンを導入した。ハンドドリップだとお湯を沸かすとこから始めて飲むまでに10分近くかかるのに対し、エスプレッソはマシンの高い圧力を利用して30秒ほどでできあがる非常に効率のいい飲み物だ。エスプレッソを始める前には、ある程度のマシンさえ買っていれば、簡単に美味しいエスプレッソが飲めるだろうとたかをくくっていたが、まったくそんなことはなかった。優良なカフェで飲むあのエスプレッソには程遠い。粉の粗さ、フィルターに粉を詰めるときの圧力の強さなど、ちょっとしたさじ加減でまったく違った飲み物ができあがる。その難解さが楽しみであり、美味しいエスプレッソが出来上がったときにはその味にさらなる深みを与えてくれる。

イタリア人にとってのコーヒーはエスプレッソであり、街のバールに立ち寄って一日に4、5杯のエスプレッソを飲むのだという。砂糖をたっぷり入れて、底に残った砂糖をスプーンですくって食べる。ハンドドリップもなかなか奥が深いが、エスプレッソもそれに負けないくらい奥が深い。